最低賃金の捉え方をそろそろ変えてもいいんじゃないかというお話
こんにちは。
人事サーファーのhayatakaです。
今回は最低賃金に関わるお話です。
少し前の話になりますが、今年も最低賃金が改正されました。
最低賃金は人件費上昇に直接つながる為、企業によっては悩みのタネとなっています。
この話題になると、
「そもそも最低賃金で働かせて人をコキ使う企業は潰れて当然!」
という意見が出てきます。
正直、私自身もそのような考えを数年前まで持っていました。
仕事柄、求人情報は常時チェックしているのですが、最低賃金での募集が書いてあると、「ギリギリの賃金で雇用しているけど、本当に大丈夫なのかな?」と思ったりもしてました。
ただ最近この考えは少しずつ変わってきているので考えてみました。
過去10年でどれぐらい時給が上がったのか
試しに東京の過去10年間の最低賃金を調べてみました。
平成18年:719円
平成19年:739円
平成20年:766円
平成21年:791円
平成22年:821円
平成23年:837円
平成24年:850円
平成25年:869円
平成26年:888円
平成27年:907円
平成28年:932円
10年間で時給は213円上がっていますね。
こうして見るとかなり上がっているのが分かります。
上昇率で見ると129.6%です。
では物価はどうなったのでしょう。
感覚的には10年前と今ではそんなに差は無いように感じましたが一応調べてみました。
下記サイトを参考にすると、10年前と比べるとで101.6%の上昇でした。
過去70年近くにわたる消費者物価の推移をグラフ化してみる(2016年)(最新) - ガベージニュース
ということは、少なくとも物価よりも賃金の方が上昇率が高いということが分かりました。
賃金の上昇率の方が高いということは生活する上でラクになってきたということですね。
時給932円は上限ギリギリ?
では今の時給932円は最低賃金として高いのかどうか。
個人的には働く側から見ると、今の制度体制であれば932円あたりが上限かなと思います。その理由は新卒社員の初任給を見ていくと分かります。
新卒社員の平均初任給額から見る
新卒社員の平均初任給額をみてみましょう。
厚生労働省が出している東京都の学歴別初任給データから社会保険(健康保険・厚生年金)料を引いて、より手取りに近い金額で見てみます。
大学卒:180,344円(額面211,300円)
高卒:149,280円(額面173,200円)
です。
ここから1日8時間・月20日勤務と仮定した場合の時給は、
大学卒:1,127円
高卒:933円
となります。
つまり手取りベースで考えた場合、高卒初任給の手取り額と最低賃金額がほぼ同じになるのです。
今の状態のまま最低賃金を上げると、高卒の手取り初任給より高校生アルバイトの方が時給が高くなる現象が起きてしまいます。
ですので、本来であれば今の時給932円あたりで留めておくのがベターかなと思います。
今後も最低賃金が上がるなら同一労働同一賃金に近づく
とはいえ、安倍首相は最低賃金1000円を掲げており過去10年も推移を見ても上がり続けそうです。
企業側からしたらアルバイトと正社員に給与の差をつけるのが段々と難しくなってくるのではないでしょうか。
もしこの流れが続くとしたら、同一労働同一賃金の実現に近づくと思います。
つまり正社員だからアルバイトより給与が良いわけでなく、同じ業務をするのであれば同じ給与になるということ。
個人的には同一労働同一賃金に賛成です。
給与は自分の仕事の成果に対する報酬だと考えます。
同じ成果を出したのに雇用形態によって差が生じるのはおかしい、というのが主な理由です。
ただ正社員の解雇規制緩和の問題や成果の評価方法等も考えなければいけませんが、ここはまた次の機会に。
まとめ
正社員とアルバイトで仕事の差別化が難しい職業では、最低賃金が上がり同一労働同一賃金になると、アルバイトからすると可能性が広がり、正社員からするとアルバイトもライバルになる時代が近づいているということです。
一昔前までは冒頭のように最低賃金で働かせることが批判の対象になっていましたが、上昇が続けば今後は、最低賃金スタートの企業も増えると思います。
ですので最低賃金の捉え方を変える必要があるかもしれません。
最低賃金スタートの企業=悪い企業ではなく、
最低賃金スタートの企業=普通の企業、という感覚です。
その代り、
企業側からすれば納得感のある評価制度作りが、
働く側からすれば自分のスキルを上げて上を目指す努力が
より一層求められる時代になるのかなと感じます。
人事職は経営側と現場側のつなぎ役ですから、責任は大きいですよね。
身が引き締まります!